現代社会政策理論研究紀要

現代社会政策理論研究会とは

 明治20年代の日本に、ローレンツ・シュタインの議論を媒介として社会政策の概念が導入され、資本主義の発展に伴って生じる「労使間の分配問題」を原因とする、貧民=貧困問題に対処するための応用経済学的な内容を帯びた学問として、社会政策論が確立されました。明治30年代以降は、階級緩和政策や生存権との接続可能性が模索され、経済に限定されない総合的な視点を有するものとして、社会政策学説の進展が見られました。ドイツ語Sozial Politikの訳語としての社会政策に、後にSozial Reformとしての内実が充填されるようになり、貧困問題や労働問題を含めた広義の社会改良として、社会政策は把握されるようになったのです。
 歴史的事実として、日本における社会政策は、戦争、災害、疫病など経済問題以外の諸要素を動機として発展を遂げました。戦後、憲法25条の社会権条項を経て個人を基盤とした社会福祉理論が興隆を遂げ、その上位概念としての社会政策は、「社会秩序の維持ないし醸成を目的とした政策」として観念されるに至っています。社会秩序という考え方により、社会政策は個人の社会権のみではなく、社会そのものに注目し、社会福祉政策を包含する概念として捉えるべきこととなっています(金子良事「日本における「社会政策」概念について-社会政策研究と社会福祉研究との対話の試み」社会政策2巻2号2009年)。
 「社会そのものに注目し、社会秩序の維持ないし醸成を目的とした政策」としての社会政策理論は、当然のことながら一国の中で完結するものではありません。そのようなものとしての社会政策理論が、国境を超える国際的な広がりの中で、移民が行き交うグローバル化、家族構造の変化、ジェンダー規範の変化など、現代的で多様な諸論点に向き合うとき、狭義の社会政策論とは異なる「現代社会政策理論研究」という表層と実質が次第に顕現化してきているように思われます。
 現代社会政策理論研究会は、そのような問題意識を共有する研究者らによる共同体として産声を上げました。その研究成果が、現代国際社会における多様な問題の解決に向けた処方箋を僅かでも提供することができれば、これにまさる喜びはありません。